正義のため#01
「話し合いでどうにかなるって甘い話じゃないだろうな」
隼人は王宮に着くと侍女に声を掛けてクレリセッチのいる場所へ案内してもらう。
どうやら自室にいるらしい。
ドアをノックすると要件も聞くことなく中から返事が返ってくるが、その返事は入室を拒む返事だった。
隼人が名前を名乗ると少しの間の後に招かれた。
クレリセッチの部屋は全体的に綺麗に整っており、整理整頓が行われている。
ただその中でも机の上だけは世界が異なる光景が広がっていた。
「随分と取り込み中みたいだな」
「今日は何の用じゃ?」
「嵐でも来そうな天気だったから、ちょっと雨宿りついでに話をしようと思ってな」
「この国で嵐なんてものは歴史的に見ても一度もない」
「そうか? 俺には人間と獣人の怒号が入り混じる、そんな嵐が来そうなきがするんだけどな」
「耳が早いな。誰からそれを聞いたのだ?」
「そんなのはどうでもいいじゃないか」
隼人は近くにある椅子に腰を掛けると、すぐには出て行かないという意思を見せる。
「どういうつもりだ?」
「お主には関係のない事じゃ」
「関係ないってのは流石に冷たいんじゃないか? このままだと戦争が起こるぞ。それを望んでいるのか? あんただってそんな考えが回らないような人間じゃないだろう?」
「ならばどうしろというのだ? 一部の獣人族の動きが怪しいのがわかっている中、それを知らぬふりをして民たちを危険に晒せというのか? ならばこの国が抱えている兵力は何のための力か? 危機から国を民を守るための力だろう」




