接触者#02
「来てくれたか」
「あんた何者だ? なんで俺に声を掛けた?」
「警戒はしないで欲しい。俺はフレムノ王国の兵団長をしている者だ」
そういうとフード脱ぎ顔を見せる。
「王宮の? 兵団長さんが一体何の用だ?」
「その前に、まずは獣人街での接触申し訳なかった。悪い影響がない様に、可能な限り最小限の接触にはさせてもらったつもりだ」
「それはいい。質問に答えてくれ」
「わかった。声を掛けさせてもらったのは王宮で起こっていることについてだ」
兵団長は王宮の事情を事細かに説明をする。
外部が知りえないような、獣人族との争いが企てられていることも。
「あの爺さん何考えてんだ」
「冷静ではないのは間違いない。ルクア様の状況だけではなく、ハビエル様も国へ戻っていない状況だ。この国は進んではいけない方へ歩み始めている」
「それで、なんで俺にそんなことを話した?」
「貴方が魔王でありながら、モンス王国を救ったと耳にしたからだ」
「つまり国を救って欲しいということか?」
「馬鹿なお願いをしているのは承知だ。ただ私には、私たちにはその力がない!」
「人間が魔王に願いを乞う。その意味を理解しているのか?」
「私が払える代償なら喜んで払う。金でもこの命でも」
兵団長の目には澱みも揺らぎもない。
本心で国を救いたいと思い、本来の立場であれば頭を下げるべきでない相手にまで頭を下げ願いを乞う。
「あんたの命なんてもらっても嬉しくねぇな」
「やはりだめなのか…」
「命はいらないってだけで、力を貸さないとは言ってないだろ」
「本当か!?」
「ただし、何も代償がないってもの癪だな」
「…っ!」
「よし、なら一つ約束をしてもらうか?」
「なんだっていい。それで国が救われるなら払ってやる」
隼人は兵団長に笑みを浮かべながら要求を伝える。




