接触者#01
「私だけは嫌! それなら私も一緒がいい!」
「…まぁそうだろうな。となると別の対策をとる必要があるわけだ」
「私、戦えます」
確かにミーナはギルドからBランクを認められている。
そこら辺の冒険者よりも実力が高いのも明白だ。
「よくわからないけど、この場所から離れることはできないんですよね? それなら私がこの場所を守ります」
「確かにその方が安全かもしれないな。どこへ行っても状況は変わらない。それに言っても聞かないだろう」
グライジェは少し呆れた反応を示しながらも、それを受け入れる。
「わかった。ただ約束はしてくれるか? 絶対に無理をしない。危険だと思った時は必ず逃げ出すこと、よいな?」
「約束する」
話がひと段落したことで隼人は立ち上がり、ミーナにあとは任せてその場を後にした。
路地から表通りに戻り、予定通り人街へ向かおうとすると、ローブで身元を隠す人物にすれ違いに声を掛けられる。
獣人街で身元を隠すのは、獣人族であってもそうじゃなくても訳ありだ。
辺りにいる獣人からも不審な視線を浴びることになる。
「街外れの岩陰で待ってる」
その一言だけを言い残し獣人街の奥へと消えていった。
正体もわからないが放っておくわけにもいかないだろう。
隼人は反対方向から獣人街をでて、砂漠へ足を踏み入れる。
代り映えのしない砂の海を歩き、街外れの岩陰へ向かう。
恐らくだが何度も通った獣人街と、集落の途中にある場所が指定の場所だ。
目的地が近くなるにつれて警戒を高めていく。
難航すると思っていた待ち合わせは、思いもよらずあっさりと達成することが出来た。
そこにわかるように先ほどの人物が立っていた。
隼人は一定の距離を保ちながら対峙する。




