襲われたグライジェ#03
「窓は一つ。ここからミーナが抜け出して、俺を探しに来たってことだろうな」
窓から見える景色は隣の建物の壁で、決して景色を楽しむための窓ではない。
よくも悪くもまとまった調理場はどの位置からも、その全貌を確認することが出来る。
水場に食器棚、テーブル、床下収納。
狭い調理場を歩きながらその違和感の正体を見つけ出す。
「ここの棚とテーブルの位置だな」
隼人がテーブルと棚を移動させようとした時、グライジェが隼人の名前を呼ぶ。
「どうした爺さん」
「お主が何に気付いたのか、それについては隠すつもりはない。ただ今はまだ、そのままにしてくれぬか」
「……わかったよ」
隼人は触れていた棚とテーブルを元に戻し部屋へ戻る。
しばらくすると、ミーナが医者を連れて戻りグライジェの手当てが行われた。
骨が折れているところはあるものの大きな問題はないらしい。
「心配したよグラ爺!」
「すまんの」
「それで説明が出来ることはあるか? 襲ってきた奴らとの面識とか」
「詳しく話すことはできぬが、お主が気付ている通りじゃろう」
「旗を取りに来たってことだよな? なぜ爺さんが匿っているのかはこの際聞かないでおくが、機密に長けた爺さんが情報を漏らすとは思えない。どうなっているんだ?」
「この中の誰かが情報を抜かれたのじゃろう」
ミーナがただ一人、話の状況についていけておらず疑問の表情を浮かべている。
「相当優秀な情報屋がいるってことだな。この場所も旗の事も抜かれているなら、また奴らは来るだろう」
「どこへ行っても危険なのは変わりがなかろう」
「とりあえず、ミーナだけでも安全な場所へいたほうがいいだろうな」
グライジェは隼人の言葉に賛成を示すが、それを当然のようにミーナは反対する。




