襲われたグライジェ#02
近くの建物の上から様子を伺うが、すでにその人物たちの影はない。
警戒しながら近寄り家の中へ足を踏み入れると、争った形跡が残る部屋と奥の扉の前に寄りかかるように座るグライジェの姿があった。
「グラ爺!!」
「ひどいなこれは…」
ミーナが肩を貸しながら部屋の中央へグライジェを連れてくる。
横になれるように布を敷き寝かせる。
荒れて汚れてはいるがないよりはマシだろう。
「一体何があったんだ? 盗賊とかそんな類じゃないな 明確な意思をもってこの場所を狙ってきてる」
喋るのもやっとのグライジェの様子を見ながら、部屋を見渡す。
「ミーナ。来た奴らはどんな質問をしていたか覚えているか?」
「えっと…。『どこに隠している?』とか『人間の肩を持つのか?』とかだった気がします」
「……」
「どうかした? ハヤト?」
質問の深い意図までは見えないが、襲い掛かってきた獣人たちはクラウディアの仲間で間違いないだろう。
そしてグライジェしか知りえない情報を、どこかで手に入れている。
「信用が出来る医者は知っているか? この場所を教えても大丈夫な奴だ」
「グラ爺が教えてくれた人ならいます」
「その人を呼んできてくれ。グライジェの手当てをしないといけない」
「はい!」
ミーナが飛び出していくのを確認して、隼人は奥の部屋の扉に手を掛ける。
扉を開けるとそこは調理場のようになっていた。
部屋全体を一目で確認できるぐらいに整理されており、先ほどの部屋とは違い争った形跡もない。
それぐらいはっきりと『何もない』を理解することが出来る。
ただその『何もない』が今は違和感を覚えさせる。




