鬼の救世主
「なんだ、何がおこった…?」
「わかりませんが、今はライカ様を保護する必要があります」
「さて、この場にはもう用はないが。お前たちは片付けておくか」
グレイヴッツがライカから手を離し、こちらに体制を向ける。
それと同時に姿が消え、いつの間にか隼人との間合いを詰めていた。
「魔王様!!」
「魔王様って呼ばれてるけどさ、魔王ごっこでもしてるの?」
グレイヴッツの拳が隼人を襲う。
「(避けられないっ!)!!」
その刹那、グレイヴッツの右腕が斬られ間合いを取り直す。
「くっ!」
「なんだ、何がおこった?」
「…本当に食えない男ですね。ですが、今回は助かりました」
「鬼刃:鬼歩」
気付けばライカのそばに、カイオルの姿があった。
「一体この状況はどういうことだい? 今回の討伐目標はサラマンダ。そのサラマンダは健在で謎の男と交戦。そしてライカちゃんは大傷を負っている」
「あれはカイオルか? 雰囲気が違うが…」
「(この状態で攻撃が全く見えなかった。)おい、お前は何者だ」
「それは知る必要はない」
カイオルの姿が消えると共に、グレイヴッツに再び斬撃が走る。
「なるほど、竜族か。どおりで刃の通りが悪いわけだ」
「ちっ!」
グレイヴッツが大きく間合いを取り、斬られた箇所を確認する。
カイオルは隼人とベルザの前に立ち、グレイヴッツを視界に収める。
「まずはあの男から全てを聞き出す必要があるようだね」
「(未知数で、状況は良くない。一旦引くか。)生憎だが時間切れだ」
背中から大きな白銀の翼を広げ、一瞬のうちに空へ浮かび上がる。
「じゃあな」
「ただでは逃しません! <<スアーク・ユニオン>>」
地面から黒い塊が垂直にグレイヴッツに向かい飛び出す。
身体に当たるとそのまま消えてなくなる。
そのまま気付くことなく、グレイヴッツは飛び去ってしまった。
「さすがに剣を空まで届けるのは無理か」
そういうと剣を鞘に戻す。
「そうしたら、この状況を君たちに説明してもらわないといけないね」
「…さすがにこの状況なら仕方ないか」
カイオルにこれまでの経緯を話す。
何故、戦闘が行われておりライカがあの状況なのか。
討伐対象のサラマンダが健在で、この状況にありながら報告がなかったのか。




