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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
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燻る火種#01

「クレリセッチ様、考えを改めたほうが良いのではないでしょうか?」


 兵団長がクレリセッチに対して質問を投げかける。


「国王様が動けぬ今、ここでの権限は私に委ねられておる」


「ですが、ルクア様は争いを拒むのではないのですか? 一度ご意見を頂かれた方が…」


「国王様はまだ体調が優れておらぬ。兵団長は国王様が狙われたというのに、その指を咥えて見ておけというのだな?」


「そんなつもりはありません。ただ流さなくてよい血もあるのではないかと…」


「話は分かった。ところで兵団長は最近、休暇は取っておるか?」


「休暇ですか?」


「イサンダの辺境に、海を見ながら過ごすことが出来る場所があるそうだ。明日からそこで休暇を取るとよい。無駄な血を流さずに済む」


「クレリセッチ様!」


 以前の落ち着き払った冷静なクレリセッチの姿はなかった。


 明らかに怒りで正常な判断をすることが出来ておらず、人が変わってしまったようだ。


「これにて会議を終了とする。自身の仕事へ戻るように」


 クレリセッチが会議の場から姿を消してしばらくすると、小さな囁きが次第に大きくなる。


「本当に争いを始めるというのか?」


「この地を離れることも考えたほうがいいかもしれません」


 各々が抱く不安と不満が徐々に肥大化していく。


「兵団長、大丈夫か?」


 この地を出ていくように命が下された兵団長に対し、最も関りが深い参謀総長が声をかける。


「この地を出ていけと言われたことは、そんなに問題じゃない。争いが起こってしまう今の状況が問題だ」


「国王様が病に伏しているとはいえ、クレリセッチ様の考えは極端だ。普段のあの方ならこんな決断をすることはないだろう」


「このままだと本当に獣人族とぶつかり合ってしまう。彼らが本気を出せば、人間なんて相手にならない」


「やはり何か引っかかる」


「……調べることはできるか?」


「そのつもりだ。お前はどうする?」


「命に従い一度王宮を離れて、人を探してくる」


「誰を探すんだ?」


「魔王だ」

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