クラウディア#02
「ゼロのところに?」
「はい。顔を隠していましたが、おそらく…」
「一族の裏切り者が一体なにをしに帰ってきたの?」
「そこまでは…」
「まぁいいわ。下がりなさい」
「はいっ!」
「ちょっと待ちなさい」
その場から逃げるように去る男を呼び止める。
「な、なんでしょうか?」
「あんたやってるわね」
「ど、どういう…」
男が喋り終わる前に手を叩くと同時に、男は大きく吹き飛ばされて壁へ衝突する。
砂埃が立ち上がる中、近くにいる別の男に吹き飛ばされた男の服を探るように指示をする。
「クラウディア様、これが」
「やっぱりね」
男が取り出したのは何かの小さな機械だった。
その一部が赤く点滅しており、起動していることを示している。
クラウディアが男の手から機械を受け取るとそのまま握り潰して破壊する。
「ゼロですか?」
「別の野良犬かもしれないし、それは分からないわ。その男を逃げれないようにしておきなさい。全員他の者たちを招集して、準備をしておきなさい。まもなく開戦の火蓋が切られるわ。獣人族の誇りを取り戻すため、そしてあの方へ恩を返すために人間を滅ぼすわよ」
クラウディア率いる獣人たちの表情が引き締まる。
もうまもなく人間と獣人の争いが始まろうとしていた。
それから数日後、王宮でも不穏な動きが見られ始める。
全体的に空気が緊張し、侍女達からは不安を感じ取ることが出来る。
王宮内の円卓にはクレリセッチを筆頭に兵団長などが集まっている。
ただその場には国王の姿はない。




