四天王カイル#02
この世界に来てから当たり前のように倫理を壊す行為をしているのを、今更ながらふと感じてしまう隼人。
罪悪感というのも正直薄れてしまっていることに恐怖を覚える。
「さて、ハヤト話してもらうことはできるか?」
ガジットが切り出す。
違うことに思いを馳せた意識を戻して、隼人が王宮で見てきたことを話す。
「なるほどな。大体の思惑は見えてきたな。つまりはきっかけを作ろうとしているのだろう」
「きっかけ?」
「ハヤトの話を信じるのであれば、獣人と人間が手を組んで、国王を暗殺するメリットはなんだと思う?」
「正直メリットは存在しないだろ。囚われた人間はこの国のあり方を変えるって息まいていたけどな」
「そうだ。もしかしたら知りえないところでメリットがあるのかもしれないが、現状あるとは考えられない。となれば今回は別の所に目的がある。例えば争いを始めるきっかけ作りだったりな」
「今回の事態に人間側が腹を立て、獣人族と争うのであれば大義名分の元で争うことが出来る。もし、バレずに国王が殺されていたとしたら、王なき状況をチャンスと見て争いを仕掛けることが出来る。もしバレても人間側が何も仕掛けてこないのであれば、それは別に構わない。ということだろう」
カムイが考えられるケースを補足する。
「その通りだ」
「でも待ってくれ。いま人間と獣人が争いを起こすような環境には見えない。何が軋轢もでもあるのか?」
「それは今の関係についてじゃないのか? なぁ?」
ガジットはカムイのほうを見て問いかけるように疑問をぶつける。
隼人の知らない事情をこの2人は知っている。
回答をしないカムイに変わって、隼人が言葉を返す。




