脱獄の手引き#01
「確かここだった気がするな」
ガジットが手探りで探していた場所が少し動き出す。
どうやらカモフラージュされているらしい。
「一人ずつしか通れないような隙間だ。辺りを警戒しながら外へ出る。先に俺がいく」
先導をきってガジットが牢獄へ足を踏み入れる。
完全に姿が消えたとのちに、少しして隙間化から見えるように指で来るように指示を送る。
それを見て隼人は付いていく。
隙間を抜けた場所は牢獄の一室で閉じ込められている状態だ。
「牢獄っていったけど、本当に牢獄の中とはセンスがあるな」
「ここは一番奥の牢獄で監視が立ち寄らない場所だ。基本的に投獄されるときは手前から入れられるからな」
「ここからはどうやって?」
「気づいていると思うが、この牢獄は一つの洞窟を利用して作ったものだ。作為されたものはこの鉄格子ぐらい。洞窟っていうのは溶けやすい性質の岩が、長年の月日を経て溶かされて出来上がる」
確かに石灰岩が弱酸性の雨水によって削り取られて出来上がっていく。
だからといって答えは見つからないが。
「その岩は非常に加工がしやすいが、曲げる力には弱く耐水性もない。ヘイル王国のように雪が多く降る地域では特に、脆くなってしまうこともある」
ガジットは転がっている石を拾い上げるとそれを強く握って手を広げる。
「普通じゃ壊すこともできない石だが、こうするとすぐに崩れる」
もう一度握ると冷たい空気を感じた。
手を広げるとボロボロになった石が掌から零れ落ちる。
「冷気か?」
「その通り。ここの岩たちは冷気に弱い。耐久性が落ちるってわけだ。この部屋には至る所に施されている」
良く辺りを見渡せばところどころに加工を施したような跡が残っている。
崩した後に再加工をしているということだろう。




