訳アリ者同士#01
「…なるほど。それでこの地へ足を踏み入れたと。ゼロがよく許したものだ」
「許してくれているってわけじゃないと思うけどな」
「そうすると、ここに連れてこられたのも嘘ではなさそうだな」
「嘘をつく必要がないからな」
「すまない。非礼を謝らせてもらおう」
先ほどとは打って変わった対応に戸惑いながらも、隼人は話をする。
「あんたはなんでこんな場所に住んでるんだ?」
「ここに住んでいる方が勝手がいい」
設備を見る限りでは確かに不便はないだろうが、利便に長けているとも思えない。
ということは、相容れない特別な理由があるのだろう。
「それでお前が知りたいことはなんだ?」
「そのまえに、あんたを信用しているわけでないってことを伝えておく」
「いいだろう。それぐらい慎重じゃなければ、生きていけない。その上で聞こうか」
「あんたが知り得る中で、獣人を仕切っている奴らは何人いる?」
「どういう意味だ?」
「ゼロのような獣人が何人いるかって話だ」
「俺が知り得る中では2人だ。まず一人目はお前の口からでたゼロ。ゼロはここの集落を取り仕切っている。以前は別の奴が取り仕切っていたが、そいつはいつからか集落から姿を消し、今はどこにいるのかわからない。そして2人目はクラウディア。」
「クラウディア?」
「この前獣人街に戻ってきたという話だが、突然取り仕切りを始めたらしい。以前はそんなことはしない、大人しい女の子だったんだが、戻ってきた時には人が変わったようだった」
「俺が獣人街に行った時は、そんな名前も雰囲気も感じなかったぞ?」
「表立っているわけではないからな。目にすることなんてないだろう。ただお前の話は間違いなく伝わっているだろうな」
2分しているそれぞれに、取り仕切りがいるのはわかりやすい。
つまりそのどちらかが手を引いているということだ。
もし仮にゼロだったとしたら、明らかに怪しい隼人を泳がせるメリットはない。




