もうひとりの指導者#01
「これは思っていたより凄いな」
得意気にしている子供は自分の事のように話し出す。
「そうでしょ? 最近までリーダーがいなかったから、僕たちが代わりに掃除とかをしてたんだ」
「いなかった?」
「うん」
「今、そのリーダーはどこにいるんだ?」
「多分そろそろ帰ってくると思うよ」
隼人は自分たちが辿ってきた方向を振り返る。
勝手にリーダーが子供だと思っていたが、話を聞けばそうじゃさそうだ。
誘導されたとは言え、今更ここに居ていい気はしない。
ただ道は1本だと考えたら、鉢合わせする可能性が非常に高い。
それに集落ではなく、この場所に隠れ住んでいるということは何か事情があるのだろう。
「あんまりよくない場所に来ちゃったかもな…」
そんな後悔をしていると、背後から声を掛けられる。
その声は子供の声ではなかった。
「そこで何をしている?」
「リーダー! おかえり!」
「あぁ、ただいま」
「あんたがリーダー?」
「お前にリーダーと呼ばれる覚えはないが、何者だ?」
「僕が連れてきたんだ!」
体に大小問わず夥しいほどの傷跡を残すその男の左目は閉じており、衣類の下から見える傷は目を逸らしたくなるほどだ。




