情報交換#03
「…いいだろう。お前が知りたいことはなんだ?」
意外にも提案を飲んだゼロ。
その心理は覗くことができない。
「広場で責め立てられていた奴は誰だ?」
「それを見ていたのか。あいつはその昔、獣人族をまとめていた人物だ。お前はなぜここに来た?」
「情報収集だ。なぜ責め立てれていたんだ?」
「一族を捨てた奴が、今更何食わぬ顔で帰って来んだ。当たり前だろう? なんの情報を集めているんだ?」
「人間と獣人についてだ。それだけの理由であそこまでの仕打ちをするのか? 一体どこに連れて行ったんだ?」
「それだけの理由? 何も知らないからそんなことが言えるんだろうな。あいつは地下牢に放り込んでいる。獣人の歴史でも調べに来たのか? どう見てもお前は学者にはみえないが?」
「歴史については簡単だが聞いたさ。もちろん俺は学者でもない」
こんなやりとりを行いながら、質疑を行っていく。
相手が本当のことを言っているのか、そうではないのかは知らない。
ただ自身が納得することができる答えが、得られるかどうかが重要なのだ。
しばらく繰り返し、気付は互いの情報はほとんどが交換されていた。
それでもお互いに信用をしてわけではないが。
「なるほど。これでこちらが聞きたいことは全てだ。お前はどうだ? まだあるというのなら答える」
「いや、俺も十分だ。ただひとついいか?
「なんだ?」
「この場所での行動を自由にさせて欲しい。地下牢への出入りも含めて」
「それは無理だ。地下牢への出入りは許可できない」
「わかった。地下牢へは近づかない。それならいいか?」
「いいだろう」
こうして隼人は集落内での行動の自由を手に入れた。
常に警戒と監視されながらの行動にはなるだろうが、それでも動けるだけマシだ。




