情報交換#02
「この場所のことを知りたくて足を踏み入れさせてもらった」
「なにが知りたいんだ?」
「さっきも言ったが、俺はここのことを聞いて来た。獣人街とは別に集落があるという話をな。だから見に来たってわけだ」
「ならここがどういう場所なのかは聞いているだろう? 危険を冒してまでくる必要はあったか?」
「こんなことになるなんて想像もつかなかったな」
「お前を襲った女は何者だ?」
「悪いけど記憶にも、襲われる覚えもない」
「お前は人間だろ? 普通の人間はこんな場所に足を踏み入れることもなければ、突然狂った女に襲われるなんてこともない」
「でも実際に起こってるだろ?」
腹の探り合いをしながら決して警戒を解かない二人。
その会話は交わっているようで平行線のままだ。
「俺は可能なら友好的な関係を結べたらって思っているがどうだ?」
「そうだな。俺もそれが叶うならそうしたいが、情報を開示しない相手には無理な話だな」
「………」
「………」
沈黙が場を支配する。
しばらくの後に隼人は大きなため息を付いて口を開く。
「互いに信用することは、現状じゃ無理だ。どうだ? お互いに質問をして、答えるってのは? そうすればお前が聞きたい情報も知ることが出来るかも知れないぞ?」
「この場所、この環境で良くも提案ができるな? この状況はお前の方が不利なのを理解しているのか?」
「だからダメなんだ。対等じゃないから相容れない。もしそれでもいいなら、俺だって好きにさせてもらう」
「やれるのか?」
「試してみるか?」
先ほどの沈黙とは異なる、触れれば爆発するような爆弾だ。




