統率者のゼロ#02
「見張りの影はなさそうだな。となれば、正面から入ること自体は難しくないが、危ないだろうな。とはいえ答えとしては入る以外ないけど」
身なりを一度整えながら警戒をしつつ集落に近寄る。
人の気配を感じることが出来ないまま、敷地に足を踏み入れるが特別なにも問題は起こらない。
それどころか気味が悪いほどに集落全体から、気配を感じることが出来ない。
「異様な感じだな…」
警戒を解くことなく、集落を覗きながら辺りを探索する。
少し進むと風切り声に交じって、何かの声が聞こえ始める。
物陰に隠れながらその音の元へ向かうと、集団が一か所に集まっていた。
「なんだ…?」
集団の声に耳を傾けて、怒号の中から内容を聞き取ろうとするが、暴言がほとんどで何が起こっているのか詳細を知ることはできない。
それでもわかることは、この状況が異常だということだ。
「…中心に誰かいるのか?」
姿を確認することはできないが、その矛先が言い合いではなく一点に向けらているのは理解できた。
「ここからじゃ確認ができないな。注意が向いているからと言って大きく姿を見せるのはリスクもある」
隼人が状況確認で悩んでいる中、突如入り口側で大きな音がする。
咄嗟に身を隠し息を潜める。
「なんだ今の物音は? 方向的には入ってきたところか?」
入口からここまではそう距離も離れていない。
様子を見に行きたいが、目の前の状況把握をしたいのも確かである。




