統率者のゼロ#01
隼人はそういうと部屋を後にする。
静まり返った部屋にグライジェは話しかける。
「大人しくしておけといったじゃろう? 姿を見らえるわけにはいかんのじゃろ?」
返事もない部屋に話を続ける。
「お主を見つけた時は死にかけておったのじゃぞ? 多少動けるようになったからと、その焦りで本当に命を失うことになりかねん。しばらくは小僧に任せておけばよい。それとも小僧が信用が出来ぬか? お主は一度対話をしておるのじゃろう? 他者を排他する考えを改めねば、お主の代でこの国は終わりを迎えることになるぞ。それが嫌ならば大人しくしておくことじゃな。かっかっか!」
グライジェは笑いながら部屋を後にした。
隼人は教えられた場所へ向かうため、獣人街を奥に進み外壁に沿って向かう。
グライジェに言われるまで気にしていなかったが、人間が作り出したこの大きな建造物のせいで、一部は日も当たることがない場所が出来上がっている。
「格差を感じてしまうな」
陽の当たる場所、当たらぬ場所。
それだけでも人間と獣人との格差を感じてしまう。
「さて、そろそろだと思うんだが、このまま正面から入って問題ないか?」
まだ目的地は見えていないが、早い段階で警戒をしておくに越したことはない。
馴染めなかったはぐれ者たちの集団だからと言って、組織力がないわけではない。
むしろ他よりも強固な可能性が十分に考えられる。
「見張りや巡視が居ても不思議じゃない。かといって隠れて怪しまれるわけにもいかないからな。どうにかして中に入る算段を立てないといけないな」
隼人は思考を巡らせながら目的地へ足を進める。
それから10分程度歩くとそれらしいものが見えてくる。
決して大きくはないが、一つの集落として形を成しているのが遠目でもわかる。




