思想#01
「少し待ってもらえるか? あんた、仕事は何をしているんだ?」
「………」
「こやつは王宮内で給仕を行っておる。主に厨房での仕事をしておる」
「なるほど。だからここに入れられてるってことか。あんたは何故、疑いを掛けられてここに入れられているのか、それは理解しているんだな?」
「………」
「沈黙は答えだと取らせてもらう。どこで羽うさぎの肉を手に入れた?」
「………」
男は沈黙を貫き通すつもりだろう。
正直、この状況ならこの男が犯人なのは間違いない。
ただそれ以上の情報が今は欲しい。
恐らくもう一つの問題にも関わっていることが予想できるからだ。
「あの酒場で会っていた獣人からもらったのか?」
「っ!」
「やっぱりな」
「獣人?」
男の反応からして酒場で話していた男なのは間違いがない。
まさか見られていたとは思ってもいなかったのだろう。
「家族のためか?」
「…隠しても無駄みたいだな。そうだ、家族のために国王に羽うさぎの肉を提供した」
「なぜそのようなことをしたのだ?」
「国王が俺たち、国民の声に耳を貸さないからだ。この国は変わらないといけない。そのためには根源である国王が邪魔なんだ」
「だから2人の国王を葬り去ろうって話か」
「あぁそうさ」
「2人…? お主まさかっ!」
話を推測して2人の国王の意味を理解したクレリセッチが声を上げる。




