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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
259/314

呪術のかたち#01

 施された場所には小さな勾玉の紋様が残る。


 これが魔力の流れに制限を掛ける力を持っているらしい。


「特に変わった様子は見えないですね」


「直接変化がある類の呪術じゃないからな。もちろん身体を少しずつ蝕むものもあるらしい」


 実際にモンスで見た住民たちと、ルクア国王に発現したものは、体内の魔力を吸い上げながら対象者を死へ至らしめる呪術だった。


 隼人は竜眼を使い紋様の部分を見ると、本来とは異なる魔力反応を感じ取ることができた。


「やっぱり似た感じだな…」


「何がですか?」


 イグルーから顔だけを出してこちらを見ているミーナが、不思議そうに隼人に尋ねる。


「呪術から感じ取れる魔力が、他で見た別の物と似ているんだ」


「呪術の魔力ですか?」


「こんな説明で伝わるかわからないが、魔力は血液のように体内を巡っているんだが、呪術の魔力はその場で留まる。そのせいなのかわからないが、その魔力は澱んでいるんだ。この澱みが魔力の流れ

 を阻害することで、魔力が乱れて魔法がうまく使えなくなったりするんだろう。もちろん魔力だけではなく、本人の体調を悪くすることだって可能なはずだ」


「澱みですか…」


「あとはこの澱みを解術を使わずに消すことができるかだな」


「呪術について詳しくないので教えて欲しいのですが、呪術を解くための解術は全ての呪術に使えるんですか?」


「それに対応した解術を施さないと呪術は解くことはできない。それこそ1つの解術で解けるのであれば、呪術なんてものは誰も使わないだろう」


「それもそうですね」


 隼人は黒剣を抜くと、呪術の部分に向けてそのまま振り下ろす。


 推測の域だったが竜眼で捉えていた澱みは、黒剣が消し去るのを確認することができたことにより確信に変わった。


「黒剣で呪術の文様を消すことができる。あとは澱みだな」


 再び竜眼でみると先ほど見ていた澱みもなくなっていた。


「いけそうだな」


 黒剣で呪術を取り除くのは多少なりリスクが伴う。


 ただこれが今できる限りの最善策だろう。

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