サンドタートル#02
匂いと暑さの狭間で苦しむミーナを横目に、隼人は引き続き花に風を送り続ける。
既に隼人の集中力も限界が来ているので、この作業も長くは続けることが出来ないだろう。
そうしている間に、外で砂が大きく動く音がしたのを聞き逃さなかった。
「ハヤト! 外に来てます!」
「ようやくご対面か」
箱を手に取り外に出ると、ミーナが言うように刺すような日差しに眩暈をしながら辺りを見渡す。
お目当ての存在は、そう時間をかけることなく見つけることが出来た。
こちらにゆっくりと向かっている、少し小高い丘の様なものがすぐそこまで来ていた。
「いつの間にこんな近くに来てたんだ」
「サンドタートルは基本は砂の中に隠れて過ごしています。たまたま近くにいた個体が引き寄せられたのでしょう」
「こいつの目的は花なのか? それとも本体の植物ほうなのか?」
匂いに引き寄せられているということは花のほうの可能性は高い。
そうなると隼人が手に持っている箱を目当てにこちらに来ていることになる。
すこし離れた場所に箱を置くと、そちらの方へ顔を向けてる。
「花が目的なんだな」
こちらから間合いを詰めてサンドタートルの側にいく。
体表は普通の亀と変わらない印象を受けるが、ただ違うのは全身に砂漠の砂を纏っていることぐらいだ。
「それでどうするのですか?」
イグルーからミーナが声をかける。
「こいつに呪術をかける。といっても使える呪術がたくさんあるわけじゃないけどな」
隼人はサンドタートルに呪術を施す。
それはベルザに教わった魔力に制限を掛ける呪術で、ライカに施したことがある呪術だ。
この呪術が直接生命を奪うことはない。
「よし、これでいいな」




