サンドタートル#01
隼人はその後もしばらく風を送り続ける作業を行う。
確実にイグルー内の気温は下がり、涼しくなってきているのを感じることが出来る。
ただそれが箱の中でどのように影響しているのかはわからない。
それにたったこれだけの温度差で果たして、花の匂いが強くなるのかすらも未知数だ。
指輪の力で無尽蔵に魔力を注げるとは言え、集中するのにも労力がいるのは間違いない。
集中力が途切れそうになるなか、閻狐とミーナが変化を感じ取る。
「今、匂いがしなかった?」
「えぇ、確かに匂いがしました」
人間とは異なるから感じ取ることが出来た微妙な変化なのか、それとも大きく変化が起こる前兆なのかはわからない。
ただ変化が生じたということが、確実に進んでいる結果だ。
そして開始してから30分後には、隼人も感じ取れるほどに強くなった匂いがイグルー内に充満していた。
「すこしキツイです…」
「うん、鼻が取れそう…」
「少し甘いような、ただそれでも嫌じゃない匂いがするな」
入口から匂いが漏れ始めて砂漠を漂い始める。
「ダメ! ちょっと外の空気吸わせてください!」
ミーナがイグルーから顔を出し、外の空気を吸うがすぐに顔を戻す。
「外は地獄か何かですか? 信じられないぐらいに暑いです!」
「この中が涼しいから、その分暑さを感じやすいだろうな。閻狐は外の空気吸わなくていいのか?」
「無理になったら剣に入るから大丈夫」
「それもそうだな」




