夜香花#02
隼人はそういうとその場にイグルーを作り出す。
突如現れた建造物に、ミーナは驚いてはいたものの、特に質問をすることなくイグルーへ入る。
隼人は花を摘みイグルーへ持ち込むと、さらに花が入る程度の箱を作り出す。
その箱の側面にはよく見ると小さい穴が空いている。
それを見たミーナは流石に質問をする。
「ハヤトは錬金術使いなの?」
「錬金術ってあの錬金術か? 俺のはそんな凄いものじゃない。簡単に説明をすると、一般的な魔法は魔力を放出して使う。火球とかそういう系統が想像しやすいと思う。俺はそこに形を持たせている。上級魔術師とかもできることだとは思うが、火球を細い針状に変えたりすることができるだろ? 俺のはそれが派生して、魔力に物質を纏わせて形作っている。このイグルーや箱だって、土系統の魔法に物質を纏わせて変化させているだけだ」
「ん~、鎧みたいな感じですか? 武器に魔法を付与するのではなく、魔法に武器を付与するみたいな…… それによって魔法が強化されている…?」
「そのイメージで間違ってないよ」
「なんとなくわかりました。それでどうするつもりですか?」
「これはあくまでも推測でしかないんだが、この花の匂いが夜に強くなるってのが気になってな。花の中には気温や湿度によって匂いが強くなるものがある。砂漠ってのは夜に気温が下がるんだが、そのタイミングで匂いが強くなるなら、可能性としては十分にあり得ると思ってな」
隼人は花を箱の中に入れると蓋をして閉じる。
「少し砂が舞うかもしれないけど許してな」
隼人は両手から風を放出させ箱を宙に浮かせる。
器用にバランスを取りながら、決して落とさないように箱が浮き続けている。
「これだけで上手くいけば苦労はしないんだが」
「もしかして花を冷やしてるんですか?」
「できる限り外からの温度を遮断することで、花の温度を下げる目論見なんだがどうだろうな?」




