託す力#02
「うん」
「この儀式を行えばお前の力は今の半分になる。他よりも大きな力を持っているとは言え、半分になれば今までのような立ち回りはできなくなるじゃろう。それに今以上の力をつけることも叶わなくなる。そもそもこの儀式はまだ先、老い始めてから行うのが普通じゃ」
「知ってるよ。もうその説明は何回も聞いた。私にはなんでそんなに止めるのかわからないよ」
「時期が早いという話をしているのじゃ。何をそんなに急いでおるのじゃ? 一体何があったのじゃ?」
「何もないよ。まだね。だからこそ、今しかないんだよ」
「…わからん。なぜそこまでして時期を早め、力を半分にするのか。ハヤトに力を貸さねばならないのじゃろう? それなら今のままの方がいいじゃろうに。それに…」
「力を半分にするんじゃないよ。力の半分を託すの」
「……何を言っておるんじゃ?」
「いいから始めて」
クィルは一つため息をついて諦めて話を進める。
今から始める儀式は真竜の儀。
簡単にいうなら転生の儀式である。
竜族の中でも一部しか行うことができない儀式。
それは今持つ力の半分を転生の卵に宿すことで成立する。
ただその転生には他の問題も付いてくる。
「今から1週間。お前はこの場から動くことなくただ意識を集中させるのじゃ。飲んだり食べたりもできぬ。動けば儀式は失敗に終わり、二度とは行うことはできない」
「わかってる。だからお腹いっぱい食べてきた」
「食いしん坊が、それだけで足りぬじゃろうに」
呆れた笑いを放ちながらも話を続ける。
「1週間後また迎えに来る」
「うん。待ってる」
ライカはその場に座ると瞑想を始める。
「終わったら腹一杯に食べてもらうから、覚悟しておくんじゃぞ」
「………」
すでに瞑想に入ったライカからの返事はなかった。
クィルは王の間から静かに立ち去った。




