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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
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託す力#02

「うん」


「この儀式を行えばお前の力は今の半分になる。他よりも大きな力を持っているとは言え、半分になれば今までのような立ち回りはできなくなるじゃろう。それに今以上の力をつけることも叶わなくなる。そもそもこの儀式はまだ先、老い始めてから行うのが普通じゃ」


「知ってるよ。もうその説明は何回も聞いた。私にはなんでそんなに止めるのかわからないよ」


「時期が早いという話をしているのじゃ。何をそんなに急いでおるのじゃ? 一体何があったのじゃ?」


「何もないよ。まだね。だからこそ、今しかないんだよ」


「…わからん。なぜそこまでして時期を早め、力を半分にするのか。ハヤトに力を貸さねばならないのじゃろう? それなら今のままの方がいいじゃろうに。それに…」


「力を半分にするんじゃないよ。力の半分を託すの」


「……何を言っておるんじゃ?」


「いいから始めて」


 クィルは一つため息をついて諦めて話を進める。


 今から始める儀式は真竜の儀。


 簡単にいうなら転生の儀式である。


 竜族の中でも一部しか行うことができない儀式。


 それは今持つ力の半分を転生の卵に宿すことで成立する。


 ただその転生には他の問題も付いてくる。


「今から1週間。お前はこの場から動くことなくただ意識を集中させるのじゃ。飲んだり食べたりもできぬ。動けば儀式は失敗に終わり、二度とは行うことはできない」


「わかってる。だからお腹いっぱい食べてきた」


「食いしん坊が、それだけで足りぬじゃろうに」


 呆れた笑いを放ちながらも話を続ける。


「1週間後また迎えに来る」


「うん。待ってる」


 ライカはその場に座ると瞑想を始める。


「終わったら腹一杯に食べてもらうから、覚悟しておくんじゃぞ」


「………」


 すでに瞑想に入ったライカからの返事はなかった。


 クィルは王の間から静かに立ち去った。

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