憧れを抱いて#01
「邪魔してもいいか?」
ビックリした様子のミーナだったか、声の主が隼人だと気づくと違う意味で驚いていた。
「な、なんでここに?」
「ミーナが出て行くのが見えたからな。なんか悩み事か?」
「悩み事… うん、そうかもしれない」
「…あんまりはっきりしてないな」
少しの沈黙のあと、ミーナは口を開く。
「どうしてハヤトは他の人間とは違うのですか?」
その質問は隼人の存在そのものを指したのではなく、どうして他とは違う考えなのか。
そういう意味だろう。
「そんなに変わり者か?」
「そう… 思います」
「そうか」
「私が出会ってきた人間たちはとても怖くて、自己利益だけを求めていました」
「それはなんとも申し訳ない」
「ハヤトが謝ることじゃないです」
ポツリポツリと言葉を紡ぐ。
「みんなは人間は愚かで、私たちを奴隷としての道具としか見ていない。そう口を揃えて話をしていました。でも私はそうじゃないと思っていました。みんなが言うほど、人間はひどい生き物ではないと思っていたんです。だから一時期は身分を隠しながら人間と冒険をしていた時期もありました」
ミーナは昔話を始める。
「初めは獣人と悟られることがないように身体を隠しながら、町へ行って人間の様子を見るだけでした。そこにいる人間たちはとても輝いていて、楽しそうに過ごしていました。ある日、町に侵入してきた魔物を、人間たちが協力して討伐する姿を見て、人間に対して、冒険者に対して、憧れを抱いてしまいました。憧れを抑えきれなかった私は、勇気を振り絞って冒険者ギルドを訪ねました。おろかにも姿を隠そうともせずに」
自傷的に乾いた笑いを見せる。




