月明かりの下で#02
料理が出てくるまでの間、グライジェからさらに話を聞くことができた。
この場所をなぜ隠蔽魔法を使って隠しているのか。
ミーナとの関係など。
そうこうしているうちに料理が出来上がある。
配膳を行ったミーナは楽しそうな表情をして、隼人が食べる姿を眺めていた。
決して豪華なものではないが、肉に野菜、魚などレパートリーに富んだ料理たちで、そのどれもが美味しかった。
楽しいひと時がすぎ、夜が深くなると全員が寝床に付く。
隼人も例に漏れず眠りについていたが、部屋を出て行く気配で目が覚める。
「ミーナ…?」
静かに起き上がると隼人も外へ出る。
明かりもない裏路地は唯一、月の光で照らされておりどうにか目視することができる。
「こんな綺麗な月みたのいつぶりだろうな…」
こちらの世界に来てからゆっくり月を見る機会なんてなかった。
そもそもこの世界のあれも月という名称でいいのかも分からないが。
「ミーナはどこに行ったんだ?」
視界の悪い路地を歩いて行ったとは考えにくいと仮定した場合、ここから移動出来る場所は限られている。
「上か」
おそらく建物の上へ行ったのだろう。
雷脚を使って隼人も建物の上に移動してあたりを見渡してみるが、人影はどこにもない。
「どこに行ったんだ…?」
少しだけ移動をして見つからなければ戻ろうと考えていたが、獣人街で最も高い建物に人影を見つける。
おそらくだがミーナだろう。
隼人はその場所まで移動すると声をかける。




