ミーナとの再会#01
掃除も行き届いておらず、風で運ばれてきたのか、それともそこへ捨てられたのかゴミが散乱している。
屋外であるのにも関わらず、埃っぽさを感じることができる。
「ここじゃ」
老獣人は突如、壁の前に止まる。
なんの変哲もないただの壁を見つめる。
「なにもないぞ」
「それは一点だけを見て物事を捉えるからじゃ。それじゃ獣人に侮辱を放った男と同じじゃぞ?」
「……なんでそれを知っている?」
「物事を捉えるときは視野を広くもつことで、本来見えるはずのものが見えるようになる。それは次第にすべてを見る力を与える」
「何を言っているんだ? 俺の質問に答えてくれ。なんでいなかったあんたが、ギルドで起こったことを知っているんだ」
「言ったじゃろう? すべてを見る力を与えると。まだお主には早い話じゃな」
老獣人は壁へ向かってあるき出すと、そのまま壁をすり抜けて行く。
「は?」
あまりの衝撃的な映像に情けない声を出す隼人。
思考は今起きたことを理解できていない。
そうしている間に、壁の中から老獣人が隼人を呼ぶ。
「何をしておる。早く入ってこないか」
隼人は壁に触れようと手をのばすと、するりと壁の中に手が入り込む。
すぐ両サイドは触ることができるが、どうやらこの一部だけの壁は実体がないようだ。
思い切って壁の中に入り込むと、そこは普通の家のように空間が広がっていた。
その様子に呆気に取られていると、老獣人は家の中に挨拶をする。
「帰ったぞ」
すると奥から女の子の声がして、こちらの近寄ってくる。
目の前に現れたのは紛れもなく白いワンピースを着たミーナだった。




