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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
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老いた獣人#02

「一緒に町へ行っておったようじゃが、はぐれてしまったのか。いや、別れざるを得なかったのじゃな。そしてそれを追いここへ足を踏み入れた。じゃが敵意に満ちた行為が…」


「やめろ!」


 周囲の視線が隼人に向けられ、一瞬の沈黙があたりを包み込む。


「…老人に対して、あまり大声を出すもんじゃないぞ? 気になるなら付いてくるがいい、人間の童よ」


 振り返って店の路地へ入っていく。


 考えは一切まとまっていないが、付いていくことでその答えもまとめることができるかも知れない。


 そんな思いで少し遅れながらついてく。


 老獣人は相変わらず歩きながら喋るが、先ほどと違うのは隼人と会話をしていることだ。


「人間が獣人の娘にご執心とは、かっかっか! これは傑作じゃな」


 快闊に笑いながら路地裏をどんどん進んでいく。


 この場に2人以外の気配を一切感じることができない。


「爺さん、あんたは何者だ?」


「何者? その答えは、老いた獣人では満足ができぬということか? 困った。儂はそれ以上の答えを持ち合わせていないな。さて、どうすれば満足する答えを返すことができるじゃろうか? お節介な老獣人じゃろうか、それともお喋りな老獣人じゃろうか?」


「……もういい」


「かっかっかっ!」


 会話と言ってもほとんどは一方通行で、隼人の求めている答えがすぐに返ってくる様子はない。


 はぐらかすかのように、すべてをさらけ出すことなく老獣人は話をする。


「お前さんはワンピースの少女にあってどうするつもりじゃ?」


「どうするも、預かっている物を返したいだけだ」


「それだけか?」


「それだけだよ」


 どれぐらい進んだだろうか?


 話をしながら歩いていたので、時間の感覚は正しくはないが、それでももう10分以上は歩いている。


 ただ仄暗い路地裏を2人は歩いていく。

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