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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
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老いた獣人#01

「別に教えてくれなくてもいい。お前たちがどんな目で見てきても構わない。俺は勝手に探させてもらうぞ」


 隼人はそういうと入ってきた路地を戻り、表通りへ出る。


 通りを戻っても隼人を見る視線は変わらない。


 話しかけたところで相手にもしてくれないだろう。


「こんな現状はなくなるのが一番だな…」


 そんなことを呟きながら、さっき話をした冒険者のことを思い浮かべる。


 ただ人間の中でそういう思想を持った集団が生まれていることは、この問題を解決へ向かわせるきっかけになるだろう。


「あとは何かひと押しがあればって感じか…」


 いろんな考えを巡らせながら、ただ獣人街を歩いていると、荷箱に座った年老いた獣人に声をかけられる。


「こんなところに人間の童がなんのようじゃて」


「………」


 その問に答えることなく横を通り過ぎようとするが、老獣人は隼人の後ろをついてくる。


「いつぶりじゃろうなぁ。思い出すこともできぬな。かっかっかっ!」


「………」


「それにしてもこんな場所に何のようじゃろうな? 奴隷商… ではなさそうじゃな。そんな雰囲気は感じられん。となると探し人じゃろうか?」


 老獣人の言葉に反応をしたつもりはないが、心の内を探られたことに少しばかり気が散った。


「正解のようじゃな? はて? 人間の童が探している人物……」


 隼人が発した微かな変化を察した老獣人。


 一切相手の表情を見ることもなく、背中からそれを感じ取る力は普通じゃない。


「そこの店の店主。すれ違った女。はるか後方にいる若い男。元気に遊んでおる子供達」


 無視を続けていたが、さすがにずっと後ろで言葉を並べる老獣人にしびれをきらす。


「おい、いいかげんに…」


「白いワンピースの女の子」


 隼人は振り返って止めるように言い放とうとする瞬間に、老獣人から発せられた言葉に止められる。


 どうしてそれを知っているのか、その答えを探すために考えが巡る。


 ただその考えがまとまることなく、老獣人は言葉を重ねる。

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