拒む者たち#01
「俺が持っているのはそれが全部だ」
「何を言っている? まだ腰の剣が残っているだろう?」
「すまないが、これだけは渡すことができない」
黒剣だけは何があっても渡すことはできない。
それに渡したところで、ろくに運ぶことすらできない。
あのクィルですら、顕現していない状態の剣を放うる程だ。
「いいから渡せ」
「この剣はお前たちが持てるものじゃない。全てを持っていかれるぞ?」
「何を意味のわからないこと… おい!」
リーダーがひとり部下を隼人に近寄らせる。
「変な動きするなよ?」
近寄ってきた部下が黒剣に触れると、瞬く間に膝をその場に付く。
「なんだ… これ…? 力が入らねぇ…」
「おいお前っ! 一体何をしたっ!」
「俺は何もしていない。言っただろう、全て持っていかれるって」
「ふざけやがってっ! お前らやるぞ!」
合図を受けて後ろに控えている数人の獣人が隼人に襲いかかる。
こうなってしまうとどうしようもない。
抵抗をしないわけもいかなくなる。
「俺は争いにきたわけじゃない」
攻撃を避けながら声を掛けるが、一向に聞く耳はないようだ。
正直戦闘経験は少ないようで、制圧しようと思えば容易いだろう。
「なにやってるお前ら! 相手は一人だぞ!」
「こいつなかなかやりますよ!」
「お前たちで俺の相手は務まらない。金はやるからそれで手打ちにしないか?」
「舐めやがって! 俺が相手してやる!」
どうやらリーダーの男を逆撫でしてしまったようだ。
仕掛けられた攻撃は、部下に比べるなら確かに実力は上なのは間違いないだろう。
ただ今まで相手してきたのと比べると足元にも及ばない。




