獣人街#01
「あんた何か用か?」
「ちょっと人を探していてな」
「人間はあんた以外ここにいないぞ」
「そうじゃない。獣人の知り合いを探しに来たんだ」
「ふーん。そいつはどんな特徴なんだ?」
ここで素直に話しても期待している答えは返ってこないだろう。
それがこれまでの過去に刻まれた、人間と獣人の関係値だ。
だが期待している答えが返ってこないとしても、歩み寄らなければ変えることができないのも確かである。
「ここに来た時には白いワンピースに大きめの麦わら帽子を被っていたと思う」
「ワンピースに麦わら帽子? あぁ、確か見た気がするなぁ。こんな場所でそんな姿をしているのは珍しいからな」
「そうか。どこにいるかわかるか?」
「この先に行くと果物を売ってる店がある。その店の横道に入っていったぞ」
「助かるよ」
隼人は礼を言うと教えてもらったように道を進む。
「曖昧な記憶に対して明瞭な答え。まぁほぼ罠なのは間違いないだろうな」
目印の果物を売っている店を見つけると、横道に逸れてそのまま進む。
少しずつ静けさが深まった頃に背後に気配を感じることができた。
「なんのようだ?」
「それはこっちのセリフだ。こんな場所に人間が一人でなんの用だ」
隼人が振り返るとそこには先ほど話しかけてきた獣人と、数人の獣人がいた。
どうやら話しかけてきた獣人がこのグループのリーダーのようだ。
「さっきも言ったが人を探しに来たんだ」
「信用できないな。どうせお前も奴隷商かなにかだろ? 逃げられた奴隷でも引き戻しにきたのか? 幼い獣人は高く売れるそうじゃないか」




