表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.08~聖遺物とキストリン~
235/314

奴隷の過去#02

 隼人は以前出会った2人の悲痛に似た、この国を糾弾する獣人の言葉を思い出す。


『僕たちを助けてくださいっ! この国は腐っていますっ!』


「あれはそういう意味だったのか……?」


「金稼ぎのために秘密裏に獣人の子供が誘拐されることだってある。例え昔にそのような盟約が交わされていたとしても、これが当たり前だと思っていることが異常なんだ」


「あんたの気持ちはわかった。ただその思いを持ったとして、なにも現実は変わらないだろう?」


「わかっているさ。個人の力が無力なことなんて。だからこそ俺と同じような意見を持つ人たちが集まる団体がある。奴隷制度をなくすために活動をしている団体だ」


「そんな団体があるのか」


「そうだあんたも参加しないか? あんただって獣人の奴隷はおかしいと思うだろ」


 隼人は男の言葉を遮りながら意見を述べる。


「生憎だが俺はそれに参加するつもりもなければ興味もない。確かに獣人の奴隷制度には納得できない部分はあるが、今はそれを解決できるような状況じゃない」


 前国王は寝込み、現国王は行方知らず。


 今は一国の危機的状況であり、獣人の奴隷解放を天秤にかけずとも答えは明確だ。


 それに今はミーナの元へ向かう必要がある。


「いい話が聞けた。お前たちの考えを否定するわけじゃないのだけは理解してくれたらいい。じゃあな」


「お、おいっ!」


 男の呼びかけに応じることなくそのまま店を後にすると、町を抜けて獣人街を目指す。


 獣人街は町の正面入口を避け、離れた場所に集落ができている。


 街と称してはいるが、実質集落のような環境で人が住む場所に比べると設備も心もとない。


 隼人を見た獣人たちが口々に、なぜ人間がこの場所へ来たのかを疑問視している言葉を吐くところ見れば、人の出入りはほとんどないのが理解できる。


「すまない、ちょっといいか?」


 それに言葉をかけると逃げるようにその場を去るのも、歓迎がされていないのを理解するには十分すぎる。


「少しでも会話ができればって思ったけど、まぁこれが普通なんだろうな」


 ただこういうときに向こうから話をかけてくる者もいる。


 それは善意からのものではないのも理解している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ