奴隷の過去#01
「コイツと一緒にいたらお前まで獣臭くなっちまうぞ? あぁ、くせぇくせぇ」
「お前いいかげんにしろよ!」
「な、なんだよ!」
仲間の胸ぐらを掴み凄む。
「自分が何言ってるのかわかっているのか!」
そのまま突き放すと倒れこむ。
「お前みたいな奴とは一緒にパーティを組むことはできない。この場でお前とのパーティを解消させてもらう」
「はぁ!? なにいってんだ!!」
再び隼人の方を振り向くと頭を下げて、話をさせて欲しいと願い出る。
「…わかった。場所を移そう」
「ありがとう」
後ろで暴言が飛んでいるが、それに一瞥することなくその場を後にすると、昨晩とは違う民衆の食堂へ足を運ぶ。
飲み物だけを頼むと再び机のギリギリまで頭を下げて謝罪をされる。
「もういい。顔を上げてくれ」
「あの子は奴隷じゃないんだよな?」
「そもそも奴隷なんて興味ない。それよりどうして獣人見ると奴隷として考えるんだ?」
「この国には唯一奴隷制度が残っているだ。しかもそれは獣人にだけ適応されている」
「どういうことだ?」
「昔からなんだ」
そういうと話を始める。
「その昔、それこそ魔王がまだ目覚めていた時の話だ。当時幹部の一人にカイルという獣人がいたんだが、そいつは獣人族の中でも長けた能力を持っていて、一族の次期当主と言われていた。ただカイルは初めから魔王の幹部だったわけではなく、突然として一族を離れて魔王の元へ行ったらしい。その理由は一族の誰も知らず、ただ姿を消した当日に”獣人族を人間の管理下に置く”という盟約を、当時の国王と結んだ書状だけ残されていたらしい」
「どうしてそんな話を知っているんだ?」
「奴隷制度に疑問を抱いたからさ。だから調べたんだ。それから今までずっと獣人族はこの国において、奴隷として地位を持って生きていている」
「でもそんな姿を見かけたことはないぞ?」
「街中で見かけるわけないさ。奴隷としての扱いは想像しているよりもひどい。労働力として使い捨てられるか、貴族の慰めものとなるか。なんにせよ権利なんてなにもない扱いだ」




