奴隷#02
「ミーナ?」
離れた場所から確認をすることができない隼人は、一体何が起こっているのかわからない。
ただ、いまこの状況を放置するべきではないという判断は間違っていないと思いミーナの元へ向かう。
「おい、どうした? ミーナ大丈夫か?」
「…あんたの連れか?」
隼人の声が聞こえたミーナは、我に戻り次の瞬間何を考えるよりも早く帽子をとり被る。
そのまますぐに立ち上がり財布から金貨を1枚隼人に渡すとその場を逃げるように去っていく。
「おい! ミーナ!」
隼人の言葉に振り返ることなく走って出て行く。
後を追いかけて外へ出るが、既にそこにミーナの姿はなかった。
ひとまず飲食の支払いのために中へ戻ると、先ほどの冒険者が話しかけてくる。
「あんた」
「なんだ?」
「その、すまない」
「それは俺にかける言葉か?」
「…そうだな」
受付に飲食代を支払い、ミーナが最初に身につけていた服と短剣を受け取る。
そうしているともうひとりの仲間の冒険者が話しかけてくる。
「奴隷にお洒落までさせて変な奴だなお前」
「誰が奴隷だって?」
「あの獣人に決まってんだろ? アレはお前の奴隷だろ?」
「おいやめろ! 俺のツレがすまない。少し別の場所で話をすることはできないか?」
「お前と話す道理はないが?」
何故か無性に腹がたって仕方がない。
それは隼人本人も不思議であるほどに。
ミーナを誰かの面影と重ねてしまっているのだろう。




