少女との出会い#02
それを押して動かすことが出来るほど簡単な話でもない。
「そうですか。それなら仕方ないですね」
そういうと切り口を開きながら体を捻じ入れていく。
あれだけ臭いを嫌がっていたのに、それを気にすることなく体のほとんどが入り込んでしまった。
右手だけを外に出したまま動かず、しばらくするとモゾモゾと動き出すが一向に出てくる気配はない。
そんな姿を隼人が眺めていると、次第に外に出ている右手が大きく上下に動き出した。
「……なんだ?」
さらに様子を見ているとその動きは激しくなったうちに、ぱたりと動きを止める。
理解はできていなかったが、次の光景を見てすぐに察することができた。
外に出ている右手が元気なくぐったりとし始めたのだ。
「助けてってことかよ!」
隼人は必死に手を掴み、少女の体を引きずり出すと、項垂れた状態で出てくる。
息はしているようだが満身創痍が伺える。
「お前アホだろ?」
「返す言葉もないです……」
ゆっくり起き上がるとローブの下から、手のひらサイズの緑色をした水晶に近いものを取り出す。
「せっかくなのでこれを回収しておこうと思って入り込んだのですが、危うく私が死んでしまうところでした」
「それは何なんだ?」
「これはサンドワームの体内に精製される宝珠です。サンドワームは性質上、捕食するときは丸呑みをします。そして胴体でゆっくり圧力をかけながら消化を行うのですが、その過程で体内の死骸が結晶化していくんです。この個体は大きい方なので間違いなく精製されていると思ったんですけど、正解でしたね」
「その結晶化したのがそれなのか?」
「サンドワーム自体が倒すのが大変なので結構価値があるんですよ?」
「よく場所がわかったな」
「それはもちろん、私ですから」
よくもわからない根拠を盾に得意気にしているが、少し前までサンドワームの体内で窒息しそうになっていたのには変わりないのだ。




