伝えられない事実#01
もし国王以外にもこの症状が出ているのであれば、広がる前に止めなければならない。
「いや、報告では聞いておらん。そもそもモンス王国で問題となった羽うさぎに関しては、生態が合わずこの国で獲ることは叶わん。輸入を行うにもこの国の気候では保存も長くはもたない。幸い口にする機会はほとんどないとだろう。しかしそうなると……」
何かに気が付いたクレリセッチの言葉に隼人は自身の答えを被せる。
そうなると機会を得なければまずこの状況には成りえないということを。
「誰が何の目的で……?」
「その疑問についてはわからないが、少なくとも考えられることは、王様に恨みがある王宮内の人物ということだろうな」
「一国の王である以上、一部から恨みを買うことはあろう。だがそれが王宮内でというのか? それに何故、前国王であるルクア様なのだ? 国の決裁権を持っているのは現国王であるハビエル様だというのに」
「そんなにすぐに答えが出てくるものじゃない。探偵ごっこをしたいわけじゃないが、実行できる機会がある人物は限られてくるはずだ。まずはその洗い出しからじゃないのか?」
「……そうだな。お主も国王様に用があって来たというのにすまなかった。お主の願いは叶わぬとわかっていながら、動機を逆手にとるような形で会わせたこと謝らせてもらおう。お詫びというわけではないが、私は国王様が不在の際は代理を務めておる。もし可能であれば代わりに聞くこともできるがどうだ?」
その提案に対して隼人は断りを入れる。
前国王がこの状態でありながら、さらに現国王まで会合に出席していないという事実を突きつけてしまうと、さらなる混乱を呼んでしまうだろう。
その代わりではないが、一つ提案を行う。
「この城への出入りの自由をもらえないか?」
「出入りの自由?」
「この城で好き勝手させてくれってわけじゃない。俺の眼があれば国王の状態を確かめることが出来るし、何かしら糸口も見つけることができるかもしれない。そんな時に城への出入りで制限を掛けられると面倒なだけだ」
「……ふむ」
白い髭を撫でながら少し考える様子を見せる。




