赤竜討伐作戦開始#02
「いた」
ライカが指さす先に深くなった霧でよく見えないが、薄っすらと赤黒い影が見える。
「あれが、サラマンダか」
「私も久しぶりにお目にかかりました。」
ライカがさらに近づき声を掛ける。
「サラマンダ。なぜこんなところにいる」
「『誰だ』」
「この声がサラマンダか」
影が動きこちらを向いているのが分かる。
「霧が邪魔だ…」
ライカが周りの霧を風で吹き飛ばす。
霧で全く分からなかったが開けた空間にその姿がある。
サラマンダの顔を含む全員の姿を確認することが出来るようになった。
「私がわからないか」
「『人間の小娘に知り合いはおらぬ』」
「魔力が衰えたか?」
「『喰らうぞ小娘』」
「仕方ない、これならどうだ」
ライカが隠していた角と尾を出す。
「『そのお姿は、ライカ様…?』」
「お前、なぜこんな地にいる。わざわざヘブルレイズを離れた理由があるのか」
「ベルザ、ヘブルレイズってどこだ?」
「ヘブルレイズはサラマンダを含む赤竜が済む山岳地帯です」
「『ここに居るのは私の意思ではなく、何者かによって転移させられたのです』」
「サラマンダを転移させるとなると、並大抵の人物ではなさそうですね」
「『ライカ様、そちらの方たちは?』」
今更だがサラマンダが隼人とベルザに気が付く。
「そうか、私と同様姿を隠しているからわからないか」
ライカが指差しでベルザを紹介し、手のひらを上に隼人を紹介する。
ベルザに対するライカの扱いが、少し雑に感じられるのは気のせいだろうか。
「『この方が魔王様…?』」
「少し訳ありでな。まぁ、私たちのことはいい。お前を転移させたやつの特徴はわからないのか」
「『それが、その人物はローブを纏っていたので…』」
「ローブ?」
「以前、魔王様が聞いたという」
「ただの偶然、と考えるには安易だろうな」
「わかった。それでサラマンダよ、これからどうするつもりだ」
「『私もヘブルレイズへ戻りたいのですが…』
サラマンダが言葉を濁す。
「どうした?」
「『ライカ様のお耳に入られていないと思い申し上げます。実は…』」
「それは俺が説明しよう」
サラマンダの言葉を制して何者かが割ってはいる。
その姿は霧の中から現し、ローブを頭から被っていた。
「ローブ…。」
「お前は誰だ?」
「おっと、このままじゃわからないよな」
ライカの言葉に答えるように、頭に被っているローブを脱ぎ顔を現す。
頭には漆黒の角が生えており、瞳の真紅色はサラマンダよりも紅い。
「こいつ、ドラゴンだよ。やっぱりあの時感じたのは間違いじゃなかった」
「こいつ呼ばわりとは悲しいな。まだわからないか? ライカ」
「なんで私の名前を…」
「それはそうだろう。俺はお前の兄貴だぞ?」
ライカの兄と名乗る男は、不敵な笑みを浮かべいた。




