老臣クレリセッチ#02
「よいのですか!?」
門番が驚きの声を上げるがそれもそうだろう。
身の上も知らない男を異例として王宮へ迎えるのだから。
「私が良いと言っているのだ。お前たちは引き続き警備を頼むぞ」
「はっ!」
敬礼を行う門番の横を通り過ぎ敷居を潜ると、歩きながらクレリセッチに質問を投げかける。
どうして通してくれたのか?
それは純粋な疑問から来た質問だった。
「あのまま放置をしていれば、お主は以前のように力ずくにでも王宮に侵入しておっただろう? 後から起こる面倒を事前に沈めたまでだ」
「そりゃどうも」
「それにお主は魔王と名乗っておったのを覚えておる。到底そうは見えないがな」
そう言い放ち笑う後ろ姿からは、余裕を感じ取ることが出来る。
「もしかしたらここで暴れるかもしれないぞ?」
「お主はそんなことしないだろう? ろくに歳は重ねておらん。お主の眼を見れはそれぐらいはわかる」
「……それで本当の理由はなんだ?」
隼人は真意を問うために改めて質問を投げかける。
面倒ごとを起こしたくないからという理由だけで、魔王と名乗っている男を快く王宮に招き入れる訳はない。
その背後に隠れている目的を聞き出す。
「モンスでの出来事。国民にまでは届いていないが。各国の王を始め私たちの耳にも入っておる。ただその情報は全てではない。それを聞きたいのだ」
「たったそれだけで素性をよくも知らない人物を、王宮に招き入れるなんて許されるのか?」
「耳が痛いな。だがその件にはお主が関わっているのだろう? であれば重要人である以上、これは正当な判断ともいえよう」
「なんで俺がそんなのに関わらないといけないんだ? 国の問題ならその国が解決したんじゃないのか?」
「勿論、それが可能であれば越したことはない。しかし、どうしても無理な場合は、他の力を借りることもあろう。それに認めたであろう? たったそれだけで王宮に招き入れるのか、と」
「耳の良い爺さんだ」
「さぁ着いた」
クレリセッチの後をついていくと一つの扉の前に着いていた。
王宮内を把握しているわけではないが、この扉はなにかしら特別なものを感じることが出来る。




