王宮へ#02
「不安なのはわかるが、悟られるようなことはないようにしろ」
「そうだな。だが、会合には参加させるべきではなかったのか? 他国の視線がこちらに向くのは避けた方が良かったと思う」
「お前たちの王が行っている会合なんて興味もない。人間たちは他人にそこまで興味を示す生き物なのか?」
「そういうわけではないが、会合は各国の情報交換を行う場なんだ。それを何も連絡もなしに席を空けるというのは、さすがに注目は避けることができない。それなら不在の間に計画を進めたほうがよかったんじゃないのか?」
「……俺たちのやり方にケチをつけるのか?」
「いや、そういうつもりじゃ……」
「お前たちもこの国の在り方が嫌で手を組んだ。違うか?」
「……違わない」
「遠征は事故の可能性が付きまとう。姿を消したところで自国の者たちはしばらくは誰も気付かない。ましてや席を空けたところで伝書が届くわけでもない」
「それはそうだが……」
「計画は俺たちの王が帰還したことにより、最終フェイズに突入している。達成されればお前の家族たちも救われる。それの何が悪いんだ?
「……」
「この国は生まれ変わる。それだけを考え行動すればいい」
フードを被った男が立ち上がると店を出ていく。
ひとり残された男は下を向き机を見つめ、しばらくすると麦酒を飲み終えウェイトレスを呼ぶと会計を始める。
遠目に見える横顔から浮かない表情なのは感じ取ることができた。
「きな臭いな」
翌日隼人はギルドへ顔を出すと、冒険者や受付嬢から情報を得るために動く。
この国でなにか変わったことは起きていないのか。
得ることが出来る情報を怪しまれない程度に収集する。
ギルドに来る依頼は特に変わった様子もなく、ここへ立ち寄る冒険者たちも口を揃えて平和だと言う。
求める情報は得られそうにもないようで、ギルドを後にする。
「あまり聞きまわって変な噂が立つのも避けたいし… やっぱり直接確かめるのが早いか」
隼人は街の奥に見える一際大きな建物を見つめる。
国の象徴ともいえる王宮は雄々しくそびえ立つ。
それは力の証明でもある。




