蔑まれた一族#01
「一緒に行動してくれる相手がいることは心強いが、本当に良いのか? お前は人間だろう? 獣人と一緒に行動するのは嫌ではないのか?」
その言葉に疑問を持ちながら答えを返す。
「獣人と一緒に行動して何が悪いんだ? むしろ俺はお前たちみたいな獣人は好きだぞ」
その言葉に過去に自身に投げられた、蔑みの言葉の数々を思い出す。
『獣人が一人前に報酬だと? 使ってもらえただけでも感謝しろ』『気持ち悪い』『人間の真似事をするな』という心無い言葉たち。
蔑視を向けられ明らかな拒絶を示した言葉ばかりだった。
「変わった人間だ。お前のような人間ばかりであれば、過去の判断をせずに済んだかもしれないな」
「どうした?」
「いや、是非一緒にいかせてほしい」
「それじゃ決まりだな。俺の名前は隼人だ。よろしくな」
「俺はカイ… カムイだ。よろしく頼む」
「そうと決まればさっさと休んで、日が昇り始める前に出発しよう」
隼人はその場で寝転ぶと休み始める。
その姿をみてカムイも同じように休み始める。
焚き火の弾ける音だけが聞こえる中で静かに目を瞑ると、意識をなくすのに時間はかからなかった。
日が昇るよりも少し前に目を覚ますと、焚き火とイグルーの処理を行い二人はフレムノへ向かい始める。
気温が上昇する前に体力を温存しながら少しでも進む必要がある。
順調に行けば今日の夕方には到着するだろう。
徐々に日が登り一度休憩を取るために、簡易な休息所を作り出す。
「ハヤトは優れた魔道士なのか?」
「なんでだ?」
「昨日の寝蔵もそうだが、今作り出したこれ自体も簡単ではないはずだ」
簡単ではないと言われながらも、その作りは非常に単純なものである。
二人分の日陰が確保できる屋根のようなものと、椅子があるだけでかなり拙いものだ。
「作り自体はそうでもないが、砂をこんな風に石のように固めるのは難しいはずだ」
どうやら作り自体の話ではないらしい。
「砂を固めるのは難しいのか?」
「いや、砂を固めること自体は難しくない。ただそれは他に要素があっての話だ。こんな砂しかない場所でここまでの強度をもたせるのは、普通の魔術師じゃ無理だろう」
実際にこの砂漠地帯にも岩は存在するが、それは続成作用によって固結してできたものだ。
カムイが言うにはそれを作り出すのは、簡単なことではないのだろう。




