獣人族のカムイ#02
「おい、大丈夫か?」
「ぐっ……」
「無理すんな。もう少し休んでろ」
声も出せない状態で体を動かそうとするのを制止し、その場に寝かせて休ませる。
時間にしてどれぐらい経っただろうか?
まだ高かった太陽は傾き始め、少しずつ気温が下がり始める。
予め用意していた枝を焚き夜に備える。
「うっ……」
寝ていた獣人は苦労しながら体を起こす、隼人の姿を視界に捉えると礼を述べた。
「助かった。意識はあったが声を発することができなくてな」
「気にしなくていいぞ。それよりまだ休んでいたほうがいいんじゃないのか?」
「いや、大丈夫だ」
「食うか?」
隼人は干し肉を差し出すと、それを受け取り口にする。
気温が高くなる場所では食料の保存も難しいため、多く持ち運びが出来る干し肉が主食となる。
干し肉は唾液の分泌を助け、水を飲む機会が限られる場所では非常に優秀だ。
「そんな軽装でこんなところを歩いてたら命を落とすぞ?」
「その通りだ。ただ、どうしても先を急いでいた」
「自分の命を危険に晒してまで急ぐ用事ってなんなんだ」
「妹を探していた」
その言葉を聞いて隼人は口を噤む。
「ある時期から妹が突然姿を消してしまって、ずっと探していた。いろんな場所で情報を集めて来たが、ようやくフレムノ王国の獣人街に妹が戻ってきていると情報を手に入れたから急いでいた」
「フレムノ王国か」
奇しくも二人の目的地は同じである。
「ただ少しだけ問題もある……」
「問題?」
「訳は詳しく話せないが、俺は一族の裏切り者で獣人街に出入りができるかどうかもわからない」
「一体何したんだ」
「詳しくは話せないが、そうすることで俺たち一族が生きていける機会を得ることができた。それならその役目を背負うぐらいなんともない」
「なるほどな。俺も余計な詮索はしないし、話したくないってなら別に話さなくていいさ」
「助かる」
「そんじゃ一緒にフレムノに向かうか? 俺も用があって向かっているところだ」
驚いた顔を見せると、バツが悪そうに口を開く。




