南へ#02
「他の物もなくっているのを見ると、おそらく人間に持ち出されたのかもしれません」
「私が不在の間はお前が城を見ていたはずだな?」
「魔王様が眠りについたあと、私を含め生きながらえた魔物達は一度身を隠していました。その間かと思います」
「この眼が無いと使えないとはいえ、人間に持たせておいて良いものではない。在り処が分かり次第取り返す」
「魔王様が眠られていた間に人間達の魔法技術も高くなっています。もしゼロの魔術書をなにか違う形へ変え、運用しているかもしれません。例えば身につけることが出来る物など」
「どのみちこの眼で見ればすぐに分かる。魔術書の形に囚われず、怪しいものは奪え」
「かしこまりました。それでは私は西へ向かいます」
ベルザは暗がりに身を隠すとそのまま姿を消す。
静まり返った城の中、魔王は一人機が熟すのを待つのだった。
「あっちぃ……」
うなだれる日差しの中、日除けのフードが体温を更に向上させる。
草木も生えぬ砂の上を一人、フレムノ王国に向かう隼人。
その側にはライカの姿はなかった。
『ごめん。ちょっとやることができた』
そう言ってライカはモンス王国で別行動を提案してきた。
特別理由を聞くこともなく、集合場所だけ決め分かれて行動を始めた。
そしてなぜ隼人だけがフレムノ王国へ向かっているのか。
モンス王国へ戻った隼人達へ告げられたのは、国王から隼人たち宛へ手紙が届いていることだった。
中身を見てみるとフレムノ王国のアントン国王が会合へ顔を出していないという内容だった。
モンス王国へ行く前に立ち寄り面識もあるということと、キストリンが言った少し南の方へという言葉が引っかかったこともあり、隼人だけでもフレムノ王国へ向かうことにした。
「なんだあれ?」
一面砂であるからこそ視界も開けており、その視界の中に何かを確認することができた。
ただ何もないところで、遠目でも確認ができるような大きさの物は、想像はしたくないが良いものではない気がしてならない。
「行き倒れか……?」




