魔王の正体#02
あまりの突然の内容に一瞬驚くが、静かに次の話を待つ。
「ただその事実は載ることはない。まぁ載せれるわけ無いだろうな。人間は人間でも勇者の血を引いた人間だからな。もし少しでも触れる内容を出したら、深く調べる奴らもでてくるだろう。民衆に必要なのは魔王は魔族であり、勇者によって倒されたという事実以外はいらないんだ」
「なぜ勇者の血を引くような人間が魔王に?」
「それを今から話してやろう。と言っても、俺も聞いた話までしか教えてやることは出来ないがな」
ベルンの口から隼人が見た先の未来の話が語られた。
勇者だった者は魔王へ転じ、その力を使って四天王と呼ばれる者たちを集めた。
元の魔王は失脚し、すでにその姿はない。
集めた力で少しずつ人間達を恐怖へ陥れていくも、魔王は力を振るうたびに眠りに就き、目覚めるたびに姿を変え力を増大していった。
「元は勇者だから、力の根源が異なる分、消費する力も大きかったんだろう」
そんな事を幾多も繰り返す中、ベルンはこちらの世界にやってきた。
その時にはすでに人間と魔族は強固な敵対関係にあり、魔王不在時も四天王達が各々で統治していた。
ベルン自身も慣れない世界環境の中で状況を理解しながら、力を得ている矢先でベルジェが突如訪ねてきた。
「戦ったのですか?」
「交戦はしたな。いきなり魔王の側近だという人物が現れて、そうですかって話では終われないだろう」
「それで……」
「惨敗だ。圧倒的な力の差で、埋めることは叶わないと思ったよ。死ぬんだなって思って諦めていたら、頼みがあるって言い出すから何事かと思ったさ」
ベルジェは座り込んで死を覚悟していたベルンに対し、膝をついて頼みごとをした。
魔王様を止めて欲しい、と。
「意味が分からないだろう? 自身の主を止めて欲しいと敵に頼むんだ。でもベルジェの目は真剣だった。だから俺は理由を聞いた」
その問いに対して返ってきた答えは、親友だから、という一言だけだった。




