魔王の正体#01
「大したことじゃない。でもそうか。もしそれが本当なら、変わるかもしれないな……」
「師匠……」
「話を本筋に戻そう。俺が魔王を倒したって話だったよな?」
「えぇ……」
「なんどでもいうが、俺は魔王は倒していない。止めてくれ、と頼まれたことはあるけどな」
「止めてくれ、とは一体?」
「そのままの意味だ」
ベルンは過去にあった事をカイオルに話を始める。
それはこの世界で人間に裏切られ、親友である人間を使って自ら魔族を滅ぼさせようとした魔王がいた話。
ただそれは叶わず、思惑とは大きく外れた道を歩み始め、それを止めてほしいと勇者に願った魔族の話だった。
「その魔族が人間と交流が合ったという話は本当なんですか?」
「あぁ、本当だ」
考える素振りを見せるカイオルにどうしたと質問を投げかける。
「いえ、その話を数日前に聞いたばかりだったので」
「どこで聞いた?」
「ここから少し南西へ下った名もなき遺跡です」
「……南西というと、あそこか。その場所で何を見た?」
「いえ、見たのは私ではありません」
「例の男か?」
静かに首を縦に振るカイオル見て、話を続ける。
「あの遺跡は名は知られていないが、万知の遺跡と呼ばれている。魔術師の中では有名だがゼロの魔術書という聖遺物が封印されていた遺跡だ」
「されていた、ということはもうすでにないのですか?」
「そうだな。あの遺跡にはもう無いだろう。ゼロの魔術書自体は存在してはいるが、すでに魔術書としての形は変えているだろうな。まぁこれはどうでもいい話だ。そこまでの知っているのであれば、その後の話からで良さそうだな」
「お願いします」
「先に知っておいてほしいのは、世の中に知られている伝書に載っている魔王は人間だ」




