ベルン=シュナイデン#02
「本当の名前を隠し、名乗っている人物は今まで沢山見てきた。そう言っていました。確かに私も名を偽り、素性を隠す者に合ったことはあります。その男が師匠と同じ世界の人間だとしたら、本来の名前の意味を残す人が多いと聞いています」
「そいつに俺のことは話したのか?」
「いいえ、私の師であること以外は名前すら、一切の情報は伝えていません。それを師匠は望まれると思いましたので」
「一つ聞くが。そいつが言っていた話で、どうしてその結論に至ったのかを知りたい」
「実はその男が言ってたことは、きっかけでしかなかったんですよ」
カイオルは少し笑いながらそういうと、落ち着いた言葉を続ける。
「師匠のいる場所も、今回の考えに至る経緯もまた別の人物から得たんです」
「それだ。初めにお前がここに来たときはボロボロで、手当を優先したこともあって話を聞けなかったが、誰からここの場所を聞いたんだ?」
「ベルジェ=クリスト」
その名前を聞いてベルンは一瞬険しい顔をしたのちに、全てを察したように深く息を吐き言葉を続ける。
「お前の交友関係はどうなっている? 今の騎士様は魔族と関わりを持つのか?」
「騎士は辞めました」
「騎士を辞めた? 騎士になって自分と同じような人を守りたいって言っていたのにか?」
「守るべきは人だけではありません」
「ベルジェとはどこで会った?」
「ドボル大森林にサラマンダー討伐で向かった際です」
「なんでそんなとこにあいつが?」
「それは先に話した男と共に行動をベルジェがしていたからです」
驚いた顔を見せたのちに、大笑いをするベルン。
ひとしきり笑った後に、息を整えながら涙を拭い話を続ける。
「人間を信じないと決めていたあいつが、人間と一緒に行動か。なるほどな」
「師匠とベルジェはどういう関係なんですか?」
カイオルから出た質問は至極当然である。
魔王側近でありながら、謎が多い人物について知っていることが多いように感じ取ることができる。
そうなれば互いの関係も気になる。




