レムドラゴン#02
「あの雪崩でもお前には全く意味がないんだろうな。もう時間がない」
雪崩は勢力を増しながら迫り、時間にしてもう10秒もないだろう。
横へ逃げる時間もなければ捕まる木々も近場になく、助かる道は唯一つだけだった。
「お前の体を壁にさせてもらうしかない」
一気に踏み込むが、普段の地面とは力の伝わり方も違うため、思うように距離を詰めることができない。
向かってくるカイオルに対して攻撃を仕掛けるが、どれもギリギリで避けられてしまう。
カイオルがレムドラゴンの影に入り込んだ次の瞬間に、激しい激突音と頭上を雪の波が覆う。
図らずも一時的に雪の壁に遮られた、小さな空間に相対することになる。
「それはちょっと。いや、流石にやめてほしいかな」
タイミングを待っていたという他ないだろう。
レムドラゴンは頭を少し引くと口元に魔力を溜め始め、ブレスの体制に入る。
避ける場所がない、相手を間違いなく倒すことができる一撃を放つために。
ブレスが放たれるまでは数秒もなく、カイオルがいた場所は激しい爆発が起こり辺りの視界を遮る。
数分後に視界はようやく晴れ、曝け出されたその光景を目にして、一番に驚いてたのはレムドラゴンだった。
確かに消し飛ばしたと思われる相手がそこにいたのだから。
「ゴホッゴホッ! 流石に死んだと思ったよ。とは言っても、無傷じゃ済まなかったけどね」
黒剣を抜いていたカイオルは自身に当たる部分だけの魔力を吸収し、被害を最小限に抑えることができていた。
それでも周囲に発生した爆風や、石などの被弾により血を流している。




