レムドラゴン#01
「ライカちゃんとは意思疎通ができるが、他のドラゴンはどうか知らない。人の言葉を理解できるのだろうか」
「グルルゥ……!」
ドラゴンは警戒の唸りを漏らしている。
人語を介して来ないところを見ると、意思疎通の望みは薄そうだ。
「落ち着いてほしい。こちらには戦う意志は持っていない」
「グォォォォォッ!!」
激しい雄叫びとともに大気が揺れ、その音の大きさにカイオルは顔をしかめる。
ドラゴンを中心に雲が薄れ、ふぶきも弱まりお互いの姿を鮮明に確認することができる。
「群青色の体表…… レムドラゴンなのか」
ドラゴンの体は全身が美しい青に紫を帯びており、両翼は体が2つ入るぐらいには大きく、その翼は体を守る役割も果たしている。
額には一本の角が生えており、見下ろす瞳は強い黄色を放っている。
並の人間であればその姿に萎縮してしまうだろう。
ただ、今は目の前の相手だけに警戒を集中するわけにはいかない。
先程からカイオル足元を小石ほどの大きさの雪玉が転がって来ており、その数は徐々に増え始め中にはこぶし大の雪玉も転がってくる。
「こんな雪山で大気が揺れるほどの騒音を出せば、こうなることは必至なのはわかっていたが。さて、どうする……」
カイオルはレムドラゴンから視線を外し、山頂を見つめると今起きている現象をその目に捉える。
地鳴りと共に白い波がこちらへ迫ってくる。
「流石にドラゴンと対峙しながら、雪崩に対処する訓練はしていないぞ」
そんなことは関係ないレムドラゴンは、カイオルを簡単に潰すことができる手を使い攻撃を仕掛ける。
足場の悪い中それを躱すが、連続での回避は不可能である。




