魔力の核#02
「ちょっと試してみたことがあってな」
黒剣を抜くと蜘蛛の正面で立ち止まり、目を瞑り大きく息を吸うとゆっくり吐き出す。
目を開けると左目に竜眼を宿し、その一瞬の内に黒剣で蜘蛛を切り払う。
もちろん黒剣による斬撃は、対象を切り裂くことはなく、一切の外傷を与えない。
「ふぅっ…」
竜眼を消し、黒剣を収めてカイオルたちの元へ戻る。
隼人の背後にいる蜘蛛は奇声を上げることもなく、ただ静かにしている。
「一体何をしたんだい?」
「魔力の核っていうのか? もっとも多く集まる場所を破壊した… と思う」
「魔力の核?」
「この前の戦いで竜眼を使った際に一瞬だけ、相手の魔力がもっとも多い場所を見ることができた。そのときはそこを目掛けて全力をぶつけたんだが、もしかしたらそこを断てば致命傷を与えることが出来るんじゃないかと思ってな。それを試してみた」
「それで、歯切れが悪いのはどうしてだい? 確かにその核と呼んだものを断ったのだろう?」
「竜眼で見ても魔力の流れが乱れているし、核と呼ぶ場所からは魔力が消えている。歯切れが悪かったのは単純に確信がないからだ。さ、出発するぞ」
出口に向かって歩き出す隼人の後をカイオルが付いていく。
ライカは残り少なくなった蜘蛛の足を抱え、遅れて付いてくる。
行きは迷った遺跡も、帰りは目印をつけていたおかげもあってスムーズに脱出することができた。
これからどうするかと悩んでいるとカイオルが一度寄りたい場所があると言い出した。
「どこへいくんだ?」
「この辺まできたのだから、ついでだから師に会っていこうと思っている」
「お前の師匠?」
「今回の件も報告をしておきたい」
「それなら一緒についていくぞ」
カイオルは首を横に振るとそれを断る。




