一人の王として#02
次に視界が戻った時には二人の男以外はなにも存在しておらず、倒れている男に何かを語りかけていた。
『お前はいつか私を殺しに来るだろう。根絶すべき悪を滅ぼすため、生まれ持って課せられている使命を全うするため。お前が求められる世界なら、迫害されるのは私だけで済むだろう。共存共栄は叶わないが、私がお前の安寧を願うぐらいはいいだろう。強大な力を持つ二人が手を組んでいることを、この世界が望んではいないのであれば、その時が来れば私はその宿命を受け入れよう。そのために不都合な記憶は書き換えよう。お前と共に戦った軍勢は私によって壊滅し、お前だけが生き残ったそんな記憶に』
男はその場から立ち去る際に落ちている一冊の本を手にすると、そのまま隼人が見ている景色も途絶える。
次に視界に映ったのは先程までいた神殿の景色だった。
「戻ってきたのか…? 俺は、一体何を見せられたんだ?」
隼人は見せられた光景の二人の男のことを思い出す。
黒髪の男と金髪の男。
一人はともかく、もう一人はどこかで見たことのあるような面影だった。
遠目に見えるライカとカイオルの姿を見つけると立ち上がり、そこへ向かい歩き始める。
隼人に気付いた二人は手を上げる。
「何食べてるんだ?」
隼人はライカが口にしている物を見ながら聞く。
見た目は蟹の肉のようにも見えるが、それはあくまで白く見えている部分だけで、匂いはそれとは全く違う。
「ハヤトも食べる?」
提案される中、カイオルの顔を見ると横へ首を振った後にある方向へ顔を向ける。
それに誘われるように見ると、脚がなくなった巨大な蜘蛛が奇声を上げながらこちらを見ている。
それを見て隼人もライカが口にしている物が何かを理解する。
「慈悲の心はないのか?」
「それで、なにかわかったことはあったかい?」
隼人はその場に座ると、見せられたことを全て話した。




