ライカvsカイオル#02
しかしライカに向け振り下ろされた剣は、触れることなく止まっている。
「これはまた器用だね」
様子からしてカイオルがギリギリで止めているわけではなさそうだ。
「サンダーウォールって言うんだってさ」
「ん、動かないか」
雷が生き物のように剣にまとわりつき動きを止める。
「そしてこれが紫電っていうんだって、さっ!」
ライカから紫色の雷が発生しカイオルを襲い爆発を起こす。
「魔王さ…、ハヤトに形質変化を教わっててよかったよ」
制約を付ける際にライカは隼人から魔法コントロール<<形質変化>>を教わっていた。
もちろん、実力自体はライカのほうが遥かに上であるのは間違いない。
ただ、制約を設けた際にその力を補助するものとして、身に付けていた。
そしてこの二つの形質変化も隼人からライカ専用に考えられたものだ。
「ハヤト様がご教授されたことがさっそく役に立ちましたね。形質変化…でしたか」
「呼称が決まっていなかったから勝手につけた。それにしてもライカが使うと威力が全然違うな」
爆煙が晴れる前に距離を取り、体勢を整えるライカ。
煙が晴れた場所にはカイオルが肩で息をしながら立っている。
剣を構えているもののダメージが大きかったのは見てわかる。
「少し甘く見すぎていた」
カイオルは剣を腰の鞘に納める。
「なに? もうおしまい?」
「次は確実に…」
柄は握ったまま腰を落としていく。
その構えはまるで居合。
「雰囲気が変わった…? それにあの構えは居合に似ている」
「居合とは?」
「抜刀術と言われている剣技の一つなんだ。基本的には鞘から抜く一太刀で相手を斬る技なんだが、この居合には相手より優位に立つことが出来る2つの特性がある。1つは間合いをわからなくすることが出来るから、気付いたら攻撃範囲ということもある。そして2つ目はその攻撃速度。鞘から抜き出す速度は達人なら目で追うこともできない。カイオルのあの速さを考えると、相性のいい技の一つだ」
「兄ちゃん詳しいな。その道の人間か?」
騎士の一人が話しかけてくる。
「いや、少しこの技を知る機会があってな。」
「そうなのか。ただ、カイオル騎士長のそれは比べものにならないぞ。なにせあの人は背中に鬼を宿しているからな」
「鬼?」
「周りの様子を見てみな」
そう言われ闘技場内に目を配ると騎士たちがざわついている。
「おい、あの構え…」
「あの子ヤバいぞ」
「でもどうする。止めに入るなんて無謀だぞ」
口々に恐れる声を上げている。
この事態を不穏に思った冒険者たちも落ち着かない様子だ。
「ハヤト様。その剣術の話は一体どちらで?」
「あ、あぁ。なぜかは知らないがその記憶がある」
「何者かの記憶、魔力の流れによってお目覚めの際に、植え付けられてしまったのかもしれませんね」
ベルザがまた一人で都合がいい方に解釈をしてくれて助かる。
「とりあえず止めるなら今のうち、と言いたいがもう間に合わないか」
カイオルが微動だにせず構えている。
異様な気配を察したのかライカがさらに距離を空けるが、それに対しても一切反応を見せない。
「鬼って何なんだよ。ライカ!気を付けろ!」
「気を付けろって何をどう気を付けたらいいのさ!」
ライカの言うとおりである。
「鬼ってのはその名の通りさ」
そういうと騎士がカイオルを指差す。
「あの人は鬼と契約している」




