一人の王として#01
『これで意味がわかってもらえたかしら?』
『……もう、元に戻れない場所まで来てしまったのか』
『それにしてもすごいわ、この本。私たちが研究しても知ることができなかった事が沢山、記されているんだもの。さすがは聖遺物と呼ばれるだけはあるわ!』
『お前たちは私の死を願うのか?』
『あんただけじゃないわ。そこに転がってる化物もよ』
『理由を問おう』
『持て余す力はそれだけで凡人には恐怖なのよ。さぁお話は終わりよ! 死になさい』
上空を埋め尽くすほどの巨大な火球が出現する。
この辺り一体を焦土化させるだけでは済まないだろう。
『最高ねっ! これだけの魔法がこの一冊の本で、なにも魔力を消耗せずに使えるなんてっ!』
男は倒れたまま意識を失っている男を一瞥した後に、女に視線を戻す。
警戒をしながら周囲の軍勢は男を取り囲み、女も本を開きながらいつでも対応ができるように備える。
『少なくとも、私達はそんなつもりもなければ、考えも持っていなかった。このまま人と魔物が共存して行ける世界であれば、それ以上はなにも望んではいなかった』
男を中心に黒い影が地面を染め上げる。
その影に足を取られると一切の身動きがとれなくなる。
影は倒れている男を包み込みその姿を守るような動きを取る。
『なによこれ! 動けないっ!!』
『しかし人は魔物を拒み、あまつさえ敵将の命だけではなく、力を持っているという理由だけで同族すらも殺める判断を下した。その愚かさは種を絶やさねば治らないだろう』
あたりの軍勢から苦痛の声が上がり、次々と地面に倒れていく。
一体何が起こっているのか、一人を除きその場にいる全員が理解をすることができない。
『スアーク:ラハード』
隼人の視界すらも包み込んだそれは、大気を揺らすほどの劈く大声と深淵の闇を生み出した。




