名もなき遺跡#02
「不自然だね」
「間違いなくこの壁の向こうに道がある。恐らく地面に付いた傷は、この壁が動く証拠だと思う」
「でもどうやって動かすの?」
「それを今から考えるんだよ」
再び辺りを照らしながら観察をする。
壁や天井、地面を含めてじっくりと観察を行う。
「何か見つかった?」
「いや、生憎進展はないな。定石としては何か仕掛けがあるはずなんだが、そもそもここって本当に人間が作った遺跡なのか?」
「どういう意味だい?」
「人間が作ったにしては、あまりにも遺跡内部が脆すぎる。劣化しているだけとも考えたが、補強がされていた後もなければ、そもそも通路に一切の灯りを準備した形跡すらない。俺たちもそうだが、灯りがない中で人間がこの遺跡作るには危険で効率も悪いだろう。もし人間が作った遺跡じゃないとしたら、目的も聖遺物が置かれている理由もわからないけどな」
「つまり、魔物が作った可能性があるということかい? そうだとしたら、ドワーフのような知性や技術を持った魔物ということになる」
「可能性の話だ。ただドワーフ達ならさっき言ったように、灯りを使うし遺跡内の補強もするだろう。そうなるとドワーフとは異なる知性の高い、暗闇でも問題がない魔物だろうな。そして知性が高い魔物だったとした場合、この壁にどういった仕掛けを施すか… ライカはそんな魔物に心当たりはないか?」
「灯りがなくても行動できるって言われると、コウモリ系の魔物とかインプかな?」
「インプってあの小さい魔物か?」
インプと呼ばれる魔物は体長は10cm程で大きくても人間の子供くらいしかない。
全身が黒く、充血した目やピンと尖った耳に、膨らんだお腹しており、鉤のある長い尻尾を持った姿をしているのが隼人の中での認識で、実際にあったことなどはない。
「大きさはともかく、両種族とも知性がある魔物だよ」
「コウモリってのはヴァンパイアとかだろうな… 小さい出入り口を使って中に入れるのか?」
「もうイチかバチか壊しちゃう?」
ライカはそういうと地面に座り壁に寄りかかる。




